柿市青果小売り部門の建て替え工事が最終段階に入っています
新しいものが立ち上がる喜びと、そこに行きつくまでの数々の決め事は
それを任された私にとって悪夢にうなされるような出来事になりました
例えば、レジ台の高さや棚の角度、壁や床や戸の色、電気の色や形、看板の位置、、、etc
ド素人が考えるにはハードルが高すぎる数々の決め事に
何度も何度も失敗して、
何度もやり直しをお願いして、
沢山の人に迷惑を掛けて作り上げたものがどうか、どうか、居心地の良い場になりますようにと願います
ご心配を掛けた上にお菓子まで下さって励まして下さるお客様、感謝しかございません
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さて、今月のお酒は、『直近で入荷した品』を中心のご紹介です
どうぞ宜しくお願いいたします
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【酒の失敗談・アディオ~ス】
この出来事は、武蔵ケ辻商店街に新しい焼肉屋さんが出来た年のお話であります。どうやらすでにその店は別のお店へと変わってしまっているようですが...
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どこへも出かけない連休がまた終わろうとしている。商売をしていれば人様のお休みが書き入れ時だから自分たちは休めないのが当たり前の世界だ。もう何年もこんな風に過ごしているから子供たちもこれが普通で特に苦情が出ることもない。せめて上の子がオッサンになってしまう前に念願のディズニーランドとやらへ行ってみたいものだ。
今回、こんな自分たちへの慰労を込めてウチの一家と母、姉といういつものメンバーで外食することになった。柿市から5分も歩けば到着する新しい焼肉店を見つけた。すべてが個室のこの店は周りを気にすることなくゆったりとくつろげて子供たちもご機嫌になった。
肉は好きだ。が、しかし、年齢を重ねるごとに高価な肉を身体が受け付けなくなってきている。牛肉よりも豚肉、豚肉よりももはやカスカスの鶏肉くらいで十分だと感じている。頑張った自分たちへのご褒美だと高価なワインを注文したら、
「こちら店長からのサービスです」
と、サシが入りまくったいかにも高そうな牛肉たちが皿に盛られて目の前に運ばれてきた。
その肉を口にした途端「脂っぽい」とかなんとか言いながらワインをがぶ飲みして、また次のワインを追加注文した姉である。高価なワインなのにボトルクーラーもないのかと苦情を言うが、そのスピードならクーラーの必要もないだろう。
「ちょっと~、今日やけに飛ばし過ぎじゃないか」
そう言ってふと姉の顔を見た時、嫌な予感がした。いつもと人相が変わって何だか目が吊り上がって見えた。
「ねぇ、あんた大丈夫なん?」
「大丈夫でない」
「大丈夫でないって、どういうこと。ヤバイってこと?冗談やろ。」
姉の頬の辺りが膨らんだりしぼんだりしている。うそだろ。
「頼むから一回トイレ行ってきて」
「歩くぇん(歩けない)」
どうやら冗談ではなさそうだ。
「あんたみたいでっかいもん誰も持てんぞ」
そう言って視線を向けたダンナが小刻みに震えながら顔で「絶対無理」と言ったのがわかった。何とか引きずってトイレにぶち込んだ後...中から聞こえてくるのは到底人が発しているとは思えぬ音?獣がいるのか?ねーちゃん、あんた獣になったのか?個室から響き渡る獣の雄たけびに一同がおののいていた。何にでも興味津々の娘がやってきて「見たい、見たい」とちょろちょろし始めている。
まだまだ食い足りても飲み足りてもいないけれど、獣と化した姉をこののまま放置して飲み食いしている場合ではない事だけはわかる。
「仕方ないからタクシー呼んで、もう帰ろう」
そう言うと母がこう言って拒否ってきた。
「こんな近いところからタクシー呼ぶのはダメやろ、タクシーの人怒るわいね。恥ずかしいからやめて。」
とね。
「お母さん、言うとることは分かるよ。だけど、こんなトドみたいもん担いでウチまで歩ける?」
この言葉に渋々納得した様子の母である。
ここは一応金沢のメインストリート的場所だ。お店の人にお願いして用意てもらった真っ黒のゴミ袋を口元からダラリとぶら下げてうなだれる姉の姿は、道行く大勢のギャラリーの視線をくぎ付けにしたことは言うまでもない。
「近場でこんな感じのいい店あってんね。今度から時々一緒に来ようね」
そう話したことはもう忘れよう。この一夜限り、もう二度と訪れることはあるまい。
素敵な素敵な焼肉屋さん、アディオ~ス!!