柿市こぼれ話


【ちょっとばかし恥ずかしかった話】

こんちは。なんかいつまで経ってもあたたこうならんね。どうなっとんげんて…(こんにちは。どういうわけかいつまで経っても暖かくなりませんね。おかしな具合ですね。)今日は私がちょっとだけ恥ずかしい思いをした出来事をお話しましょう。

当社柿市商店の本社は『金沢市民の台所』と言われる近江町市場のすぐそばにあります。市場内のいろいろな会社と付き合いがありますが、その中のある老舗の鮮魚店の社長さんはとても働き者で礼儀正しく、真面目な方です。

ある雨の日、私は昼食のための交代を終え酒屋から本社に帰ろうとしていました。酒屋と本社は細い道を間に挟み、斜向かいに建っています。ほんのひとまたぎの距離ですが、渡る間に雨に濡れるのはちょっと嫌なものです。荷物もあるし、傘はなしで、ふと思い立ってビールの空き箱を頭にかぶりました。ジャストフィット

我ながらいいアイディアだと思いました。頭さえ濡れなければ不快感はぐっと減るし、これなら両手も使えます。頭の四角い福禄寿のようで変と言えば変ですが、社員の中には頭にビニール袋をかぶって行き来している人も居ます。そればかりか、品出しをスムーズにするためにビニール袋を腰ミノのようにフラフラ下げている人さえ居ます。

そんな言い訳を自分自身にしながら一歩踏み出した途端に、ご想像通りの最悪の事態が起こりました。
「柿市さん、いつもお世話になっております。」先の鮮魚店の社長さんが私に声をかけてこられました。雨で視界が悪かったせいか、私の長頭(ながあたま)に気づくのが一瞬遅れてしまったようです。気づいて小さく息を呑み、どうしてよいのか分からず目を伏せていらっしゃいます。

『どうしよう…』私もおかしな姿を見られて動揺しました。すぐに空き箱を頭から取れば、変な格好をしていると自ら認めてしまうことになりはしないか…? いや、どちらにしてももう充分変です。ままよと、長頭(ながあたま)のまま丁寧にお辞儀をして挨拶を交わしました。当社の社長に会いに来られたようでした。大変礼儀正しい方ですので、最後まで私の長頭(ながあたま)には気付かないふりでいてくださったのですが、その数分間がひどく気まずい時間でした。本当にほんのちょっとしたことで要らぬ恥をかいてしまうことがあるものなのですね。反省です。

会社の業務とは関係ない話なのですが、私の人生で一番恥ずかしかったことをふと思い出しました。あれは、私が二十歳くらいのときです。従妹の千秋と遊んでいるときに、筆箱に入っていた『ネコヤナギ』の取り合いになり、今も昔も大人気ない私は自分の耳の穴に『ネコヤナギ』を隠しました。まだ子供だった従妹がどうしても取れないようにするためです。

どうしても取れなくなりました。従妹の話ではありません。私自身、ふざけて入れたネコヤナギが取れなくなってしまったのです。耳かき、ピンセット、何を使っても短い毛がほんの少しちぎれてつかみ出されるばかりで、苦心すればするほど『ネコ』の奴、耳穴の奥に奥にと入っていってしまいます。
「どうしよう…」どうしようもありません。もうこうなったら耳鼻科に行って取ってもらうしか手がありません。行くのは嫌でした。嫌でしたが、たかがネコヤナギのくせにこの耳詰まりは恐ろしいほどの不愉快さで、とても我慢できたものではありません。

母に説得され、まだ小学生だった従妹に付き添われて耳鼻科へ向かいました。土曜日の午後でした。耳鼻科の医院に着くと、ちょうど診察時間が終わったところでした。
「月曜日に来てください。」ああ、無情。勇気を振り絞って食い下がりました。
「耳に詰まってしまった物を取ってもらうだけでいいんです。お願いします。」
「耳に何が詰まったんですか?」
「ネコヤナギです。」
「へっ?何ですって?」
「ネコヤナギです。」受付の看護婦さんがフリーズしました。これだけでも、充分恥ずかしい思いをしたことは想像できると思います。しかし、神は悪ふざけをした私を許してはくれませんでした。耳鼻科の診療を終え、帰るところだった小さな男の子が、付き添いの母親に無邪気に尋ねました。
「ママ、ネコヤナギってなあに?」お母さんは私のことを憐れに思ったのでしょう、急いで子供の手を引いて足早に去っていきました。
「ママ、ネコヤナギってなあに?なあに?なあに?ネコヤナギってなあに?」30年ほど経った今でも耳にこびりつくあの言葉、忘れられません…

結局、憎いネコヤナギは取ってもらえたのですが、口が悪い先生には
「どこや、どこや、耳にネコヤナギを詰めたっていうキチガイは?」で始まり、
「誰にこんなもの入れられたんや。」と、追い詰められ
「自分で入れました。」と、白状したものの最後の最後までばかにされ、激しく心傷ついた二十歳の思い出となりました。

でも、今思えばまだしも耳とネコヤナギで良かったと思えるのです。世の中にはもっと別な穴にいろんなものを詰めてしまって、私の何十倍も恥ずかしい思いをした人がいますよね。それに比べれば増しってこってす。

そういえば、もっと昔にうちの社長がやっぱり子供同士のふざけっこで、鼻の穴に真珠球を詰めてしまって取れなくなったことがありました。あの真珠どうなったのかな?物が高価なものだっただけに、ゲロしそこなったはずです。ひょっとしたら、まだ社長の鼻の中に有るのかもしれません。今度聞いてみようっと。


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