柿市こぼれ話


【祥ちゃん『近江町式祝い事』の洗礼を受ける】

柿市商店にまったく久しぶりのおめでたがあった。一部の人にカルト的な人気を持つ祥ちゃんが結婚したのだ。考えてみればふざけた話や、有り得ないような話にはあふれているのに、おめでたい話はここのところ百周年を除いてはとんとご無沙汰だった。特に結婚話は恐ろしいほどない。

ところで、新婚の夫には祝いの洗礼が待っている。近江町の奇習『水ぶっかけ』だ。結婚してのほほんと初出社してきた新婚男にみんなで水をかけて頭を冷やしてやろうと言うことだろうか?特に魚屋さんの水かけはエグイらしい。魚を洗った水や切り落とされた魚の頭や内臓までもが新婚男に振舞われるらしい。

当社は八百屋なので魚を調達することはなかったが、代わりに長芋の箱に詰められてくるおが屑や、腐った野菜屑、行っちゃってしまっているメロンやグレープフルーツ、氷、墨汁、タバコの吸殻などが前日から用意されていた。

嬉々として汚水を作り続ける社員たち。君たちそんなに嬉しそうに仕事していたことないよね?さらに、汚水のそばで何か大げさな掃除機のようなものを組み立てている。多分高圧で水を噴射し、車や家の外壁などをきれいにするアイツだ。まさかそれで祥ちゃんを狙撃するつもりでは・・・

それにしても前回当社で水かけが行われたのは何年前だっただろうか?多分十年程は経っているだろう。私も実際にかけられているところを見たのは初めてだ。噂によると玉ちゃんのときは4階の窓からも水がぶっかけられたらしい。

「さあ、あきらめて道の真ん中に立てや。」社長が祥ちゃんに引導を渡す。先ほどから自分にぶっかけられる汚い水を呆れた様子で見ていた祥ちゃんが
「脱ぎますわ。」と、小さく言って、パンツ一丁で現れた。

あっという間に阿鼻叫喚。恐るべき水掛が始まった。たっぷり作りこまれた汚水は、手ごろな大きさの桶に分けられ、祥ちゃんめがけてぶちまけられた。しばらくは為すがままだった祥ちゃんも、桶を持った高野さんをとっ捕まえて巻き添えにする。勿論かける方も無傷ですむわけがない。みんなそろってドボドボのぬれねずみだ。

そしてその巨大なぬれねずみ達は、なぜか祥ちゃんではなく高野さんを捕まえて大桶に逆さ吊りにして浸けようとする。しかし、その試みは失敗した。高野さんは大きくはないが、重量級だ。どうしても逆さにして持ち上げることが出来なかったのだ。ある意味メタボの勝利だ。人生どこでどんなことが幸いするか分からない。

水掛が終わって、こんなに何人も家の風呂に入れなきゃならないのかと、ちょっぴり憂鬱になっていたのだが、さっきの高圧噴射お掃除機械で社長がみんなに水をかけて洗ってやった。うちの社員は泥もん(ゴボウや蓮根など泥つきで出荷される野菜)か?いつもゴボウや百合根などを洗っている井戸水も使われたが、そんなもので洗ってもダメでしょう。社長夫人が風呂に入れと何度も言ったが、遠慮したのか誰も入らなかった。

そして驚いたことにぬれねずみ達はみんな着替えを持参していた。バスタオルまで持ってきている。まったく用意の良いことだ。後日祥ちゃんが
「あの水臭いんですわ。参りました。でも、魚屋の人たちよりましかな・・・」と言っていた。高野さんに
「あんた、嫁さんも貰わんうちに水かぶってどうするん?」と、聞くと
「最初から仕組まれとった。」と、ぼそりと言った。イジメか?それでも、大変な騒ぎだったのに怪我もなかったようで良かった。

そうそう、他の社員が
「俺、郁子さん(社長夫人)になかなか結婚できん人は、一緒にかけてもらえばいいんじゃないかって言われたんですよ。ちょっとひどくないですか?」と、言っていた。う〜ん、確かにひどいな。なかなかやるな郁子。


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