柿市こぼれ話


【言葉の力】

最近歳のせいか若い人たちの使う言葉に違和感を覚えることが多々ある。先日も当社従業員食堂で、ある若い社員が用意されたおかずの前で体をくねらせながら
「俺、これ大丈夫です。」と言った。何が大丈夫なのかよくわからないが、大丈夫なら問題ないだろうと黙っていると、彼は更にモジモジしているようだ。

どうやら言葉とはうらはらに何か大丈夫ではない風情である。
「大丈夫ってどういうこと?ひょっとして要らないってこと?」
「はい。」だったらそう言えよって話である。これなんかは婉曲に断るための言葉として使われている表現らしいが、まったく別の意味ではないか。まあ、『やべえ』と言う言葉も同じだが。

どうもうちの社員たちは野菜が『大丈夫』で肉は『やべえ』人が多いらしい。

話は変わるが、当社は青果物業。早い話が『八百屋』だ。すぐそばに市場もあって、いつも威勢のいい掛け声が響いている。勿論当社従業員にも挨拶の励行は厳しく言い渡されているが、中にはどうしても挨拶を出来ない人が居る。会社の中で挨拶が出来ないのであれば、当然取引先でも出来てはいないだろう。

当社ではかなりひどいことをやらかしても、首になることはあまり無いが、挨拶が出来ない人は早々にお暇を出されるようだ。仮採用の数週間で何度言われても挨拶できない人は、多分間違いなく首である。いろいろゆるい柿市商店のそこだけはちょっと厳しい。意外なことに若い人はけっこうすぐに挨拶出来るようになる。ひと歳いっている方は適応力が無いということだろうか・・・

これは当社の社員のことではないのだが、私が通っている整体医院の整体師さんの挨拶は無茶苦茶威勢がいい。医院に入っていくと奥の方から大きな声で何か吼える。なんとおっしゃっているのかは定かでない。多分

「ラッシェー。」とか何とか言っているのだとは思うのだが、何度聞いても判別できない。その威勢のよさは近江町市場の魚屋さんを連想させるが、彼ほどの勢いの挨拶をする魚屋さんはあまり居ない。と言うか、彼以上は大口水産の若い女の子ただ1人しか居ないような気がする。時々お弟子さんのような若い方がいらっしゃることがあるが、その方々も同じように吼える。挨拶は大切だと教え込まれているのであろう。

帰りがけに送り出してくださる時の言葉は、更に分からない。何とか聞き分けようと毎回耳を澄まして聞いてはいるのだが、私の耳には
「オライゾ!!」としか聞こえない。ゾにアクセントがあり、しかも下がる。謎の言葉だ。外国語か?いつかこの言葉を解読して、ああそうかと納得することがこのごろの私の小さな野望である。

言葉は大切だ。妹の友人のN子様が
「言葉には言霊が有る。」と、おっしゃっていた。なるほどと思った。言葉には力がある。何気に口にした言葉が、人を傷つけたり喜ばしたりする。

そう言えば、先日2人で朝ごはんを食べに来た社員がもう1人に
「かす汁っておいしいね。」と、同意を求めたのだが
「別に。おいしくも無いけど。」と、返されていた。それはどうでも良いのだが、何もそんな返事をかす汁を作った私の目の前ですることはないだろう。多分かす汁好きの社員の方は、言葉の力で私をほんの少し喜ばせようとしたのだろう。真逆の結果になるとは思いもせずに。言葉の力恐るべし。

近くの市場では売り子の方々はお客さんに声をかけるとき、必ずのように少し若く言う。オバサンにはお姉さん。おばあさんは奥さんだ。みのもんた氏ほどには露骨じゃないが、近いところまではいっている。私だって何も自分がお嬢さんだとは思っていないが、自分より年上にしか見えないおっさんに「おっかさん」なんて呼びかけられると、心の中では「俺はオメーのおっかさんなんかじゃねえ。」と、思ってしまう。

当社の社員の中にもその辺りがいまいちつかめてない人が居て、明らかに自分と同じ年代のお客様に向かって「お母さん」とか「おじさん」などと呼びかけている。その様子を見て『ああ、それは違うだろう。』と、気をもんでいるのだが、気が小さいので注意できない。まったくの未熟者だが、この歳まで来て完熟するのかどうかはなはだ疑問と言わざるをえない。


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