柿市こぼれ話


【風に舞うプラケース哀話】

やっと3月になりますね。寒さも一段落というところでしょうか。今回のこぼれ話はプラスチックケースにまつわる悲しいお話です。

当社の主たる業務はフルーツや野菜をお得意様の注文どおりに揃えて、お届けすることです。以前、こぼれ話で『箱男』の話をしました。いろいろな箱を集める男たちの話です。配送のための箱ですが、最近ダンボールの箱はNOと言われることが多くなってきました。替わりに指定されるのがプラスチックの箱です。

プラスチックのケースと言ってもいろいろあるのですが、主に使われるのは大きめのブラウン管テレビほどの大きさのもので、重さは2kg近くあります。同じ規格のものは積み重ねることが出来るのですが。何せかさばります。当社に何十個あるのかは知りませんが、かなりの数です。一日の仕事が終わり、空いたプラケースは自社ビル前の駐車スペースの片隅に積み上げられます。

この、積み上げられたプラケースが長い間私を苦しめてきました。かなりの重さがあるのですが、積み重なって風に当たる面積が大きくなるせいか、しょっちゅう吹き飛ばされて道に散乱するのです。そんなになっていても、社員の中には気付かないふりをして無視する人も居ます。私はそうはいきません。何せ、ご近所の方々にはたびたびいろいろなことで迷惑をかけているのです。道に大きな箱が何十個も転がっていたら、車も通れません。

それでも社員が会社に居る時間帯なら、必ず拾ってくれる人が居るのですが、箱が積み上げられるのはたいてい夕方になってから。六時以降は箱のそばで働いているのは私ぐらいです。酒屋の店番が7時すぎに終わっても、自分の部屋が積みあがった箱の辻向かいで、早朝に社員同士が話している声まではっきり聞こえる距離です。

ガンガラガラガラゴーン 恐ろしく大きな音を立てて箱は転がります。しかも何十個も。そしてたいていそんな風の強い日は、何度もぶっ飛んでいくのです。店番をしながら何度箱を拾い集めたことか。夜中に拾いに出たこともあります。おちおち寝ても居られません。頭にきて積んだりきちんと揃えたりなど出来たものではありません。バラバラに散らかしっぱなしです。

そして先日ついに私の限界が来ました。酒屋でお客様にワインをお勧めしていると、店の裏口の戸が開いてお向かいの奥さんが顔を出されました。「柿市さん、あんたのとこの箱、また道に散らばっとるよ。」えっ?接客していたせいか全然音に気付きませんでした。慌てて外に出てみると、道幅いっぱい、しかも10m以上にわたり箱が散らばり、通行不能になった道の端で私を睨み付けているドライバーが居るのです。「スミマセン、スミマセン。」と、つぶやきながら私は箱を拾い続けました。その間もドライバーは私を刺すように睨んでいます。悲しくって汗だか涙だかが噴出しました。

翌日、私は社長に訴えました。「もう限界や。なんとかして。」弟でもある社長は鼻の先で「ケッ」と笑うと、「何が限界や。お前の限界はほんとに低いな。」と呆れ顔です。『そんならお前がここで暮らしてみいや!』口に出しては言いませんでしたが、心では毒づいてやりました。分かっています、弟なら私ほど気にはしないだろうと言うことは。でも、ここで暮らすことは本当に大変なのです。彼は気付いているのでしょうか?私たちが子供の頃はいつも旅行のお土産を下さったご近所の方が、今では当社の車をいつも険しい目で見ていることを。

とりあえず、プラスチックの箱はビルの中にしまうことになりました。しかし、やっぱり何個かは外に出ています。ある社員がこれ見よがしに私の前で箱を積んでいました。悲しいです・・・


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