柿市こぼれ話


【「皮を鍛えろ」と、母は言う】

当社の近所からダイエーが撤退してはや幾年。近場に立派な市場があるとはいえ、日用品や安売りの食材を買うのにかなり不便を感じています。

問題は私が車を運転できないというところです。私のマイカーは三輪車。ある日意を決して4kmほど離れた業務スーパーへの買出しを決行しました。『何とかなるだろう。おおよその方角は分かっている。』小心者の怖いもの知らず。矛盾する性格の私は重いペダルを漕ぎ出しました。『この道でよかろう。』と、狙いをつけた道がすでに間違っていたようです。いつのまにか川の横を走っていました。『この道は違う。以前妹が間違って入り込んだ道ではないか。』

そんなことを考えていたせいか、小さな横断歩道を見逃してしまい、赤信号で突っ切ってしまいました。ドライバーの厳しい目に激しく心傷つきながら『だって、こんな狭い道に信号が必要か?』と、心の中で言い訳しました。動揺した私の目には2mぐらいの道幅に思えたのですが、当然立派な道だったのでしょう。

軌道修正をして本来の道を見つけました。アルプラザ平和堂が見えてほっとしました。すでに太ももに軽く筋肉痛の予感がしています。寒いからと着込んできたコートやマフラーが暑苦しくて、全身汗まみれです。下校する小学生を見守る黄色い旗を持った人たちが私のことを軽く警戒しています。そんなことを気にしていたせいか、アルプラまで来て、業務スーパーへの道を間違えてしまったようです。いつまで漕いでも、緑の看板が見えません。

『違う、絶対にまた道間違えた。』今来た道を引き返します。旗を持った人たちがどう思うかが気になります。『なぜあんなに何人も旗の人が居るのだろう? 5mに1人ずつくらい居るんじゃないかい?』大きな体に小さな心。なれない運動と心の焦りで更に汗が流れてきます。『そうだ、マスクが私をいっそう怪しく見せているな?』これ見よがしにマスクを取ってみました。ひどい花粉症なので、この時期の空気は私には軽い毒。マスクなしの外出は自殺行為ですが、背に腹は替えられません。

旗の人たちを振り切ってやっと業務スーパーにたどり着き。必要な買い物を済ませ、次はアルプラザへ向かいました。アルプラの中の100均ショップで煮物碗や御飯茶碗を買いたかったのです。振り向けば駅前のリファーレビルが見えています。『帰りは迷う心配はないな。あれを目当てに帰ればいいだけだ。』何者かに軽く勝利したような気がして小さく笑いました。

その何者かにやられたのかもしれません。買い物を終えて外に出ると、すでに日暮れて真っ暗になっていました。あまつさえ雨まで降ってやがるのです。その上買い物のし過ぎで荷物が多く、三輪車の籠に入りきりません。前と後ろの籠につけて、入らない分はリュックに入れて担いでいくことになりました。

来たときと同じように大した根拠も無く『この方角で間違い無し。』と、自信満々でペダルを漕ぎ出しました。勿論、頼みの綱のリファーレビルは見えません。それでも何とか駅の近くまで帰ってきました。『あと一息。』自分で自分を励まします。大きな交差点に差し掛かり横断歩道を探しましたが、立派な地下道があるせいか横断歩道ははるか遠くです。

『どうやらこれを利用するしか無いようだな。』なんとなく嫌な予感がしましたが、エレベーターに乗り込んで地下道へ下りていきました。このエレベーターがまた小さい!おまけに、やっと地下道に乗り入れて、さて駅の方角に向かおうとすると「自転車の通り抜け禁止!」の表示があります。ああ無常・・・だったら何で入れるようにしてあるんだよ?

せめて道の反対側に出ようとしたのですが、自転車は階段中央部急勾配の坂を押して上がるシステムのようです。絶対無理。重くて上がれないし、坂の幅が三輪車には狭すぎます。2基あるエレベーターに乗ったり降りたり出てみたりしましたが、結局どこにも行けません。さっき別のエレベーターで会った人がもう1基のエレベーターの出口から私を見ています。

結局、最初のエレベーターで元の道に戻り、大きく逆戻りして横断歩道を渡りました。駅前が明るいので、その先ひどく道をはずすことは無かったのですが、少しでも近道をしようとして常に間違った道を選んだようなので、かなりの回り道になってしまいました。多分あの地下道で脳がオーバーヒートしてしまったのでしょう。

オーバーヒートしてしまったのは脳ばかりではありませんでした。サドルに打ち付けられ続けた私の体の一部がかなりダメージを受けたようです。帰宅してトイレで用を足すとヒリヒリと痛みました。

母にこの話をすると大笑いした挙句「皮を鍛えなければダメだ。」と、言い放ちました。どこの皮をどうやって鍛えるのか? 有り得ん話です・・・


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