柿市こぼれ話


【何をおっしゃいます】

 今回は当社の酒部に出入りされているある飲料メーカーの営業の方のお話をしたいと思う。

 この方の口癖は「電卓を貸してください。」と「何をおっしゃいます。」である。飲料の仕入れ値にも定価があるようなのだが、言いなりに払っていたのではこちらも商売にならない。なぜ、製造販売をしている飲料メーカーの入れ値が、間に入っている業者からの仕入れ値より高いのか?納得行かない。

 そこで交渉をすることになったのだが、ここで「電卓を貸してください。」になるのである。別に彼は電卓で計算をするわけではない。電卓に価格を打ち込み「これでどうでしょう?」と、交渉してくるのだ。だったら口で言ったらどうなんだ?と言う話である。

 それに毎回毎回「電卓を貸してください。」と言わなければならないほど必要なものなら、自分で持って歩けばどうなんだろうか?まったくわけのわからない男である。しばらくの間私たち姉妹の間では彼は『電卓男』と呼ばれていた。

 今現在の彼の呼び名は『何をおっしゃいます』である。電卓は最初の頃は必要だったらしいが、仕入れ値も決まってしまった今では必要なくなったらしい。

 『何をおっしゃいます。』のおかしなところは、こちらが何もおっしゃらなくてもその言葉で切り込んでくるところだ。

 一番おかしかったのは、妹が自分の子供の卒業式か何かで訪問着で出席し、そのまま帰ってきて割烹着をつけて店番をしていたときのことである。

 これもおかしいと言えばおかしい。普通卒業式に着物で出席するなら、会社は休むか早退するもんだろう。そこを戻ってきて、さらに着物に割烹着の店番である。こういうところに当社の厳しい現実が見え隠れする。子育てする女性にまったく優しくない会社である。まあ、会社自体にそこまでの余裕が無いと言うことだろう。

 さて、たまたまそのときに彼はやって来た。妹を見るなり一瞬息を呑み 「何をおっしゃいます、素晴らしいですよ。」と、のたもうた。妹は何もおっしゃってはいない。ただ冷たく彼をジロリとにらんだだけだ。

 そして心の中で『なんだこのトンチンカンな電卓男。あたしはなんも言ってねえよ。馬鹿じゃねえか?そういう言葉は例えば私が「今日は子供の卒業式だったもんで、こんな格好で驚かれたでしょう?」とか何とか言った場合にのみ出てくるもんだろう。何にも言ってないのに何が「何をおっしゃいます。」だよ。ダラやな、ダラ。おめーはほんまもんのダラ男や。』とばかりに毒づいた。もちろん心の中でだが。(ダラとは金沢弁で馬鹿および間抜け、ときどきパーを表す言葉です。)

 『何をおっしゃいます』はそうとも知らずに、ややあせった様子で仕事を済ませ、去っていった。

 余談だが妹は天才的に口が悪い。彼女が臨機応変に相手に投げ返す言葉は言いえて妙。一種の才能である。例えば私が毛皮の襟巻きをして酒屋に入ってきた途端
「なんやそれ、ドブネズミか?」

 また、手作りのエプロンをしてくると
「なんやそれ、まさか良いとでもおもっとるんじゃないやろね?頼むしそんなもん着たまま外出んといて。頭おかしいと思われるし。」

 先日は私が店に入ってくるなり
「あんた、腹出とるよ。コーラッコ?」

 さらに、自分の旦那に対しては
「あんた、その靴下どこで買ってきたん?」ちょっと自慢気に旦那が
「○○○○や。」と言うと
「へー、あの店そんな趣味悪い靴下売っとるんや?知らんかったわ。」

 旦那のおニューの毛糸帽は
「なんやそれ、韓国アカスリか?」てな具合である。

 まさしく天才!私などどれだけ頭をひねっても彼女ほど上手に人を扱き下ろすことは出来ない。しかし、この才能に恵まれたことが良いことなのか、どうなのか私には分からない・・・・・


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