柿市こぼれ話


【ちょろい奴】

 今回は最近私を悩ましているある事情について訴えたいと思う。この事情が私の仕事にも影を落としているので、事態は深刻である。

 「ちょろい」って言葉は金沢弁なのだろうか?人は時として自分に都合の良い勘違いをするものである。だから標準語だと思って使った言葉が県外の友人にまったく通じないことがある。

 私が驚いたのは「コケのおつゆ」が方言だったことだ。金沢では「コケのおつゆ」は「きのこの汁物」のことで、「今日の味噌汁のコケは何?」という具合に使われる言葉である。友人に「コケって苔寺のコケのこと?苔を味噌汁に入れるの?」と聞かれたときには心底驚いた。もちろん私の家族も「コケ」は標準語だと思っていた。

 それから、「カッキャマ」も通じないと知って驚かされた。「カッキャマ」は正式には「柿山」と言う。「カッキャマ」は多分「柿山」の方言と言うか…略式の砕けた言い方だと思っていたのだが、まさか「柿山」自体が方言だとは知らなかった。「カッキャマ」とは標準語で言うところの「おかき」のことである。「おかき」は標準語だよね?違うのかな…

 ああ、今回は別に方言の話ではない。私は自他共に認める「ちょろい奴」なのだ。この言葉がもし方言なら「気の小さい奴」と言えばだれでも分かるだろう。最近とみに「チョロイ」とか「チョロ臭い」と言われまくっている私の悩みの種は、すぐ近所の近江町市場での買い物である。

 地元の人間には「オミチョ」で通っている近江町市場は、ただいま工事中である。およそ1/4から1/3の店舗を立ち退かせてビルを建てているのである。立ち退いた店は仮店舗で営業を続けているが、市場の中は本当にモタクタ・・・いや、落ち着かず混乱した有様となっている(それでも、その混沌とした有様が返ってビルなどより風情があるように感じるのは私だけだろうか?)。

 市場全体で170店舗ほどあるらしいが、私の仕事「柿市商店従業員食堂のまかない婦」としては、食材の調達のための買い物も重要な仕事の一部である。そこで私はほぼ毎日歩いて2〜3分の市場に買い物に出かける。市場全体をザラッと回って、特にお買い得な物や、その日どうしても手に入れたいものを探して買ってくる。

 家業が八百屋兼酒屋なので買いたいもののほとんどは肉や魚、練り製品などである。ここで都合が悪いのは、毎日訪れる私はほとんどの店で顔なじみになってしまっているということである。顔を出して品物を物色して、意中の物がないとき「今日は欲しいものがない。」と、さらっと言えれば苦労はない。それが言えなくて要りもしないものを買ってくる。
もちろん私もプロであるいじょう会社に迷惑をかけるわけには行かないので、自宅用の買い物に切り替え、自分の財布からお金を払う。そして、次の店に向かう。かなり無駄は多いが今まではそれなりにうまくいっていた。

 ところが今回の移転で、いつも行っていた魚屋さんが隣同士の仮店舗になってしまった。これにはまいった。どちらからも買うわけにはいかない。どちらか一方で買って知らん顔できればこんなに苦労はしない。悩みに悩んだ挙句、仕方なし他の魚屋さんで買うことにした。

 そんなこんなで10日ばかり経った頃、いつも行っていた魚屋のお兄さんとバッタリ会った。
そのとたん柿市っぁん、毎度!!と、どやしつけるように挨拶をされてしまったのだ。つまり、ちっとも毎度ではないわけで、その不満を私にぶっつけてきたということだ。やっぱり・・・どこで買おうが私の勝手ということではないようだ。

 それでもどちらで買っても角が立つ。とうとうその二軒の店のある一角を通ることすら出来なくなって、同じ会社で働いている伯母に泣き付いた。「どうしてもどっちの店でも買うことが出来ない、お願い、私の変わりに買ってきて。」以来、伯母は私のお使い係となり、嫌な顔一つせずに頼んだものを買ってきてくれるようになった。情けない話である。

 しかし、実のところ前も通れなくなった店はそこばかりではない。いろいろな事情で何件かの店の前は通れなくなっている。おかげでうんと回り道をして買い物をしなければならなくなっている。ほんとにまったく情けない、筋金入りの「ちょろい奴」である。


加賀野菜等の買い物地酒ギフトミニ知識とレシピ会社概要トップページ

〒920-0904 石川県金沢市下近江町 45番地の1 TEL.076-221-1365
E-mailto:info@kakiichi.co.jp