柿市こぼれ話


【柿市社長暗殺計画】
 ある日社長が自宅で奥様に聞いた。
「なあ、わし一日に何杯コーヒー飲まんなんと思う?」
「えっ?」
「午前中だけでも何杯となく注がれるんやけど、柿市の女の子らわしの事殺そうとしとらんないけ? カップ空になると飛んで持ってくるんや。」思い出してちょっと怖くなったのか、社長は大きな体をプルッと震わせた。
「断ればいいでしょ。」
「う〜ん、それはそうなんやけど…」いつもながらにはっきりしない態度である。

 ある日社長夫人が会社の女子従業員を捕まえて言った。
「ねえ、社長あんたらに殺されるって言っとったよ。コーヒー注ぎすぎやて。」いつもながらに何も考えずになんでも言う人である。悪気はない。

 言われた方はしどろもどろ
「そんなことないって! だって社長コーヒー空になるとカンカンカンってカップたたいて催促するから、私たち忙しいけどすぐ注ぎに行くようにしてるんですよ。私がどうしても手が放せないときはあっ子ちゃんが走ることになっているんです。」
「えっ?」話がだいぶ違う。すると、それを聞いていた社長のお母様が言った。
「ああ、それ社長の癖なんやわ。もっとも本人も気がついていないみたいだけどね。」

 つまりそういうことだったのだ。社長は考え事をするとき空のコーヒーカップをボールペンでたたく癖がある。それを見た女子従業員は、コーヒーの催促だと思い込み走って注ぎに行く。そして社長は従業員の好意なのか殺意なのか疑いながらも断りきれずにそれを飲んでいたのである。人とはおかしなものである。

 こうして『柿市社長暗殺計画』はガセネタだと分かり、その後は社長も従業員も平和なコーヒータイムを楽しめるようになったらしい。

追記
 先にも書いたが、社長夫人はよくしゃべる。しかもあまりよく考えずに思いついたことを口に出す。そのことでかなり損をしていると思うのだが、けっこうおおらかな性格らしくあまり気にしてはいないようだ。

 エレベーターで社員のN君が食堂に上がってきた。それを見た彼女は
「うわーびっくりした。馬がエレベーターで上がってきたのかと思った。あんた馬そっくりやね。馬に似とるって言われんけ?」
「う、馬? 馬ですか…」面と向かって言われたほうもびっくりである。
「あっ、ごめんごめん。ついつい正直者なもんで。」恐ろしいほどのプラス思考である。

 このあとしばらくは、N君は「馬」と呼ばれていたが、いつの間にかその呼び名もすたれてしまった。なぜなら当社にはもともと「馬」と呼ばれている社員がいたからであろう。彼は馬に似ているわけではない。苗字に「馬」の字が使われている珍しい名前の持ち主だからだ。

 話がそれてしまったが、彼女はみんなが思っているよりいい人なのに正当な評価を受けていない。それが残念な気がする。心根も優しいし、陰口なんて嫌いである。裏も表もない分かりやすい性格で、付き合っていくには楽な人。けっこういい奴なのだ。


加賀野菜等の買い物地酒ギフトミニ知識とレシピ会社概要トップページ

〒920-0904 石川県金沢市下近江町 45番地の1 TEL.076-221-1365
E-mailto:info@kakiichi.co.jp