柿市こぼれ話


【酒屋の景品】
 わが社には酒部という部署がある。はっきり言ってあまり繁盛してはいない。聞いた話では、ある蔵の方が「ああ、あのマニアックな酒屋ね。」と言っていたとか。今回はその酒屋の景品の話をしたいと思う。

 最初は酒屋の景品もまともだった。酒屋というものはたとえ繁盛していなくてもそれなりに出入りのメーカーのかたからの頂き物があるものである。ワイングラスをいただいたり、ロゴの入ったTシャツをいただいたりで、それらの頂き物をお客様に還元しようというところから「千円以上お買い上げのお客様にプレゼント、ただし一人二個まで。」が始まった。

 ただ、そのような良い景品はあっという間に無くなってしまう。景品を置いたかごがガラガラになると、なんとなく寂しい。そこで私は考えた。「そうだ、店番をしていて暇なときに、余り布で袋を作って景品の足しにしよう。」そう、そこからとてもまともとは言えない景品のかご物語が始まったのである。

 「な〜んやこれ、こんなもん誰持っていくがいね?あんた頭おかしいんじゃないかいね。」せっかく私が作った袋を見て、口の悪い妹がとがめだてた。しかし、意外にもけっこう持っていかれるお客様がいらっしゃったのだ。ここで私は調子づいた。しまいに余り布がなくなり、古着をリサイクルし始めた。母のよそいきのスーツや、私の若かりしころの浴衣などで袋を作りまくった。

 「な〜んやこれ、気持ち悪い。あんたの着古したTシャツで作ったこんな袋、誰が持ってくもんかいね。」妹の厳しいダメだしが続いた。確かに彼女が指摘したその袋は変だった。時に手に取るお客様はいらっしゃったが、皆、見てはいけないものを見てしまったとでもいうように、そそくさと元の場所に返した。しまいに私はその袋に注目されると心が痛むようになった。しかし、やがてその袋でさえ嫁ぎ先が見つかり、私は胸をなでおろした。

 次には干支の柄が入ったお猪口である。これは大人気で、出すしりから消えていった。しかし、自宅の戸棚に何十年も眠っていたへんちくりんなお猪口を出してきたとき、またも妹の悪口が炸裂した。「なんやそれ、あんたどっからそんなもん出してきたん?やめてくれんけ、そんなもんで酒飲んだら酒がまずくなる。」しかも今回は常連のお客様までそのお猪口にダメだしだ。とにかく見ただけで大笑い。涙まで流して腹を抱えて笑った挙句に。どんな人がこれを持って行ったか教えてほしいとまで言われてしまった。

 ところが、このお猪口こそ当店の景品の人気ナンバーワンになってしまい、あっという間に無くなってしまった。あまりに変な品だったので、選んでいらっしゃるお客様に「あ〜、あんまりじっと見ると気絶しますよ。」などと言って、気をそらそうとしたのだが、お客様はニコリともせず「俺は丑年だから牛の柄のを二ついただこう。」などと言いながら真剣に選んでいかれる。これには私も心底驚いた。こんなもの持ってく人がいるんだ。何十点もあった笑えるお猪口は五日ほどで無くなった。

 そのほかにもこのかごの中には多くのスターが登場し、消えていった。たとえば型押しガラスのカップアンドソーサー、身長5cmのウルトラマン、クッキーの空き缶、信じられないほど雑なつくりのぬいぐるみ、30年以上も前の皮製のブローチ等々。景品と言うより嫌がらせか?と言うような数々の品々。今にして思えば写真にとっておけばよかったとすら思えるほどである。

 そして今現在、このかごの中には訳のわかんない竹筒、ソーサーのないカップ、説明することも難しいようなおかしな景品が並んでいる。でもいずれはどなたかが持っていかれるのであろう。常連のお客様がおっしゃるには、「以前は粒ぞろいだったけど、今はけっこう普通に見える。」そう、前よりましなのである。

 このホームページを見て当店にきてくださる気になったお客様、ぜひうちの自慢の景品を見てください。そして、何か一点、最もくだらないものをお土産にお持ちくださいますようお願いいたします。


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